2019年10月27日「初心忘れるべからず」
初心忘れるべからず・・・
この言葉が私の口をついて出たのが大学入試の面接の時であった。
君の尊敬する人は誰か? そして君の信条は何かと問われた。
ハイ、私の尊敬している人は父です。そして私の信条は「初心忘れるべからず」ですと答えていた。
この言葉が私の口をついて出たのは、私の小学三年生の時の苦い思い出があったからだ。
私はどうしても野球をやりたくて親の反対を押し切って野球部に入った。
当時はグローブやバットはとても高価なもので、親にとって買うことはとても大変な出費であったのだろう。
私はあらゆる手を尽くして親を説得し新しいグローブを手に入れ野球部に入った。
その喜びは今でも忘れることが出来ない。
しかし、その喜びもつかの間であった。理不尽な先輩に対して憤りを覚え衝突してしまった。
引っ込みのつかない私はあっさりと野球部を退部してしまったのである。
六年生になって学校を挙げて野球の応援に行った時である。
私と一緒に入部した同級生達が試合の中で躍動感あふれて溌溂颯爽(はつらつさっそう)として光り輝いていた。
その瞬間、私は強い後悔の念にかられていた。
皆と一緒に野球をやりたくて入った野球部だったのに今、私はその中にいない。その寂しさと悲しさと悔しさで胸がいっぱいとなっていた。
高価なグローブを買っていただき、何よりも好きな野球が出来る喜びを忘れ、私の自我の強さで退部してしまった。
後悔先に立たずとはまさにこのことだと思った。戻りたくても戻れないこの寂しさ、悲しさ、悔しさを噛みしめる時に私の心に「初心の心を忘れては必ず後悔」するという強い思いが刻まれた。
今、28歳の時の私、創業の頃を思い出している。何とも言えない不安、寂しさ、やるせなかったころを思い起こしている・・・誰も相手にしてくれない、誰も見向きもしない、私の姿を見て遠ざかる仲間たちもいた。
そういう中で私に仕事を依頼して下さるお客様がいた。そして出来の悪い私でも社長、社長と慕ってくれる社員やクルーやさわやか社員がいた。
家族を守る、社員を守る、仲間を守る、皆を守る。そして私を応援して下さるお客様に報いたいという必死の思いで仕事をしていた・・・その時の心を今、忘れてはいないだろうか?
私の心に慢心、傲慢、不遜という病気が生まれてはないだろうかと考える。
慢心、傲慢、不遜は自分では気づけない病気である。
何故かと問えば自分が慢心している限り永遠に気づくことができない病気であるからだ。
病気を取り除く方法はただ一つ初心に返ることである・・・
私の初心は創業の頃の不安と寂しさとやるせなさであった。
何故か初心を思い起こすと私の心は素直になり謙虚な心になることが出来る。
感謝、有難うございます。